沖縄県に漂着している軽石は、本島だけにとどまらず、離島にまで漂着する自体になっています。この軽石による被害は多岐にわたり、その経過とともに、今後具体的にどの様な被害になっていくのでしょうか、軽石による影響について見て参ります。
沖縄の海、漂着する軽石
本年の8月、小笠原諸島・福徳岡ノ場において海底火山の噴火により発生した軽石が、沖縄近海に漂着している問題は、今なおその影響が大きな問題となっています。この軽石問題はまだ収まる気配が見られず、その対応が問題とされております。
まず、軽石が漂着する事における影響は、どの様なものがあるのかをご紹介したいと思います。小笠原諸島の火山噴火による軽石の発生は、今回が初めてではなく、35年前の1986年にも同じような現象が起きており、今回で2度目です。
1986年に発生した軽石問題は、本年度に起こった規模と比較してみるとかなり軽微だったと言われています。前回の軽石が沖縄に漂着するのに要した時間は4か月程度かかった模様で、その量も海辺で探せばようやく見つかるといった程度だったものです。
35年前、何故、小笠原諸島で起こった海底火山の影響を沖縄が受けたのかは、黒潮反流と呼ばれる海流の流れにより、4ヶ月かけて沖縄に到達したものと考えられています。この海流により運ばれた物が、今回に比べるとごく少量漂着したのです。
日本沿岸に沿って東・北東方向に流れる海流である黒潮と呼ばれる流れの沖側に、その流れとは逆流する幅の弱い流れがあり、西・南西に向かって流れるこの海流は、黒潮反流と呼ばれています。
海流は、海洋中にある様々な渦の影響により、常に一定方向に流れているとは限りません。このため、黒潮の外側にある渦の影響を受け、黒潮反流と呼ばれる海流が起きていると考えられています。今回の軽石も、この影響を受けていることは間違いないでしょう。
しかし今回は、前例と比べても異例の速さである、約2ヶ月という期間で沖縄に軽石が漂着しました。この黒潮反流プラス台風の風による影響で、半ば強引な形で運ばれてきたと考えられているようです。
言い換えるならば、海流の流れに乗り、無理やり風の影響で強引に流されて沖縄に漂着したという事ではないでしょうか。
前回とは桁違い
そして、今回一番の問題は、沖縄に流れ着いた軽石の量です。前回の量は、今回のこれほど大きな問題に発展するほどの物ではなかった用です。しかしながら、今回の量は様々な分野において、目に見えるものや目に見えないものまで含めて被害は甚大です。
今回のこの軽石の量は、沖縄にある港を埋めつくす程の量が流れ着いているものです。軽石はその名の通り質量が軽く、海水に浮いてしまいます。そのため、船の航行が不可能になるほどその問題は深刻です。
除去するにしても、その量があまりにも多すぎるため、除去作業は困難を極めています。除去作業の進展についてですが、まだ軽石の全体量が把握できていないのが現状です。そのため、除去した後の軽石の処分についても、現在は軽石の量が山積みで、放置させて置くしかないものです。
軽石の問題は、このように船が航行できないという事が最も大きな問題です。沖縄はその構成する地域の殆どが、離島と呼ばれるものが多く含まれているのはご承知の通りです。原状の問題として、この離島に対して物流が行われないと言う事があげられます。
離島への物流の大半は、船を使って行なわれています。離島の中でも空港を有する所は完全にストップと言うものではありませんが、輸送や移動手段を船だけに頼っている島では死活問題となります。
空港を有する島においても、空路輸送できないものはストップした状況に陥ります。このように、軽石が沖縄にもたらした被害は深刻で甚大です。勿論、これら輸送という物に対する影響は改善されつつありますが、そのスピードは迅速とは言えないようです。
軽石がもたらす被害は、沖縄の基幹産業である観光という観点からも、大きなものとなっています。沖縄の観光産業に占める海という資産が、軽石により大きく阻害されているという現実があります。
海は沖縄にとって、最も重要な観光資産です。その海が軽石により、見るも無残に姿を変えていると言っても過言ではありません。観光業が被害を受けると言う事は、ひいては沖縄の経済をも悪い方向に向かわせてしまうと言う事に他なりません。
軽石はまた長い目で見れば、自然への影響も間違いなく現れてくるものと予想されます。特に、浅瀬の海に対する影響が最も心配されているようです。軽石は特性上、互いにぶつかり合ったりして微細な物になって、やがて沈殿すると考えられています。
沈殿した軽石は、魚類などへの影響として、生息域の環境が変わる事により死滅し、生息域が変動するといった事に繋がります、また珊瑚などへの影響がどの様なものになるかなどは、憶測の域を出ないのが実情のようです。
また軽石は一夜にして特定域から姿を消すかと思えば、再度現れるなどその動向を掴み切れていないのも実情です。軽石は風の流れや海流によっても、移動する物だからです。これらは全て自然次第ということになりますので、人の手によりコントロール出来ない問題です。
また現在その除去や、撤去した物の処理に掛かる費用の資産も完全に出来ていない事も、問題を複雑化させています。既にこれらの問題は沖縄県のみで処理できる範疇にない問題であり、その費用も国が考えなければならない規模の災害と呼べる物であるようです。
今回の軽石に対する評価は、人災ではなく完全な自然災害です。一般的なニュースではなくこれはもはや、災害と呼ぶべき規模のものであるという事は間違いのない事実ではないでしょうか。
そしてこの軽石問題は、沖縄県だけに留まらず他県にも広がっています。軽石は、海流や風の流れにのり、その漂着場所を刻々と変化させています。この問題はかなり長期に渡ると考えられます。
現実として、鹿児島県でもこの問題は発生してきており、他県にもその影響は出てくると見られております。軽石は海難事故にも繋がってきます。広大な海の何処にどの程度の軽石があるのかを可視化して表記するのは困難です。
特定域だけに存在するものでない以上、海上を航行する全ての船舶に危険が及ぶ可能性はまったくないとは言えないものです。実際沖縄県では100隻以上の漁船などにトラブルが起き、航行不能に陥ったとの報告が挙がっているようです。
今回の軽石問題は終わりが見えない物である以上、長期化する事は必至であり、国全体の問題として考えなければならないものです。軽石の人体への影響はまだ報告されていませんが、それもただ分かっていないという事に他なりません。
このような自然に由来する災害は、予知する事はほぼ不可能です。起こってしまって初めて対処するしか方法がありません。特に今回の様な海底火山の動向は、把握する事が非常に困難であることは間違いのない事です。
日本という土地柄、火山との向き合い方を今回は切実に痛感させられる出来事であったと言えると思います。
まとめ
災害は忘れた頃にやってくるとは、まさにこの事ではないでしょうか。まだ完全な解決策が見つかっていない以上、有効な対応策を早急に見つける事が急務ですが、中々に簡単な事ではないようです。
しかし日々の暮らしが営まれている以上、対症療法である地道な軽石の除去作業が今のところ唯一行なえる対処でしかないのは致し方無いものです。その作業に携わっておられる方に敬意をもって期待するものであります。